1、貧困をなくそう

あらゆる場所であらゆる形態の貧困に終止符を打つ
新型コロナウイルス感染症により、極度の貧困がこの数十年で初めて増加しました。2020年には新たに1億1900万〜1億2400万人が極度の貧困へと追いやられました。
世界の貧困率は2030年には7%に留まり、貧困撲滅の目標には届きません。
各国政府は新型コロナウイルス感染症に対応するため1,600件の短期的な社会保障措置を実施しましたが、依然として40億もの人たちが社会保障を受けていません。
 

2、飢餓をゼロに

飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は世界の飢餓を悪化させています。2020年には世界全体で新たに7000万-1億1600万もの人がパンデミックの影響により飢餓を経験した可能性があります。
世界全体で栄養不足に陥った人の数は、2014年が6億700万人だったのに対し、2020年は7億2000万-8億1100万人となっています。
パンデミックにより、子供の栄養不良が悪化する恐れがあり、
発育阻害の5歳未満児の割合:22% (1億4920万人)
消耗性疾患を抱えた5歳未満児の割合:6.7% (4540万人)
世界では、出産年齢にある女性の約3人に1人が貧血を患っていて、その一因に栄養欠乏症が挙げられと考えられています。

2020年、23.7億人が定期的に食糧不足か、健康的でバランスの取れた食事を取れていません。
 

3、すべての人に健康と福祉を

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
コロナ禍により保険分野の前進が停滞または逆戻りし、平均寿命が短くなりました。90%の国々が依然として1件あるいはそれ以上の必須医療サービスの混乱を報告しています。
死亡登録システムがある国のうち、システムが少なくとも75%整備されている国は、全世界で62%に対し、サハラ以南アフリカは20%以下です。
この10年「性と生殖に関する健康」「妊産婦の健康」「子供の健康」は前進していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で停滞または逆戻りする恐れがあります。
医療従事者の数は多くの地域で不足しています。看護師と助産師は北米で10,000人あたり150人いるのに対し、サハラ以南アフリカでは10,000人あたりたった10人です。
 

4、質の高い教育をみんなに

全ての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を影響して、生涯学習の機会を促進する
新型コロナウイルス感染症によって、教育分野でのこの20年の前進が帳消しになりました。2020年に小学1年生から中学2年生までの子供の9%にあたる1億100万人が最低限の読解力の水準を下回りました。
世界全体の学校教育の修了率の改善進捗も遅い状態で、悪化する可能性もあります。
初等教育の修了率:2010年 82% -> 2019年 85%
中等教育の修了率:2010年 46% -> 2019年 53%

より良い復興のための基本的な学校インフラが多くの国で不足しています。
後発開発途上国で、
飲料水が飲める:56%の学校
電気がある:33%の学校
洗面設備がある:40%の学校
 

5、ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーの平等を達成し、全ての女性と女児のエンパワーメントを図る
意思決定への女性の平等な参加は新型コロナウイルス感染症への対応と復興において不可欠ですが、男女同数には依然程遠い状況です。
国会議員の女性が占める割合:25.6%
地方議員の女性が占める割合:36.3%
管理職の女性が占める割合:28.2%

女性に対する暴力は受け入れがたい水準で高止まりしています。コロナ禍によりさらに深刻化しており、女性の3人に1人(7億3600万人)が15歳以降、生涯で1回以上の身体的暴力および/または性的暴力を経験しています。
コロナ禍前には、およそ1億人の児童婚が予測されていた状況に加え、今後10年間に新型コロナウイルス感染症の影響で、さらに最大で1,000万人の女児が児童婚のリスクにさらされるおそれがあります。
コロナ禍により、無給の家事や育児、介護の負担が増加し、女性が労働人口から締め出されています。それ以前から、女性が無給の家事や育児、介護に費やす時間は男性の2.5倍です。
 

6、安全な水とトイレを世界中に

すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
2020年、数十億人が依然として安全な飲料水と衛生を利用できていません。
20億人が安全に管理された飲料水を利用できておらず
36億人が安全に管理された衛生施設を利用できておらず
23億人が基本的な手洗い設備がありません
また、1970年から2015年までの間に、自然湿地が35%減少しており、これは森林消失の3倍の速度です。
129カ国において2030年までに持続可能な形で管理された水資源を確保する目処が立っていません。これは現在の前進速度を2倍にする必要がある事を意味します。
 

7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに

すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
世界人口の1/3(26億人)が危険で非効率的な調理システムを使用しています。
7億5900万人が電力を利用できておらず、そのうち4人に3人はサハラ以南アフリカに暮らしています。
近代的な再生エネルギーに関する取り組みを加速させることが必要で、エネルギー最終消費に近代的な再生エネルギーが占める割合は、電力部門が25.4%、暖房部門が9.2%、輸送部門が3.4%です。
 

8、働きがいも経済成長も

すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
コロナ禍により2億5,500万人分のフルタイム雇用に相当する仕事が失われました。これは世界金融危機(2007-2009年)時の約4倍です。
外国人観光客数は、2019年の15億人から2020年には3億8100万人に減少しています。国際観光が2019年の水準に戻るのには最長4年かかる見込みです。
コロナ禍により就業も就学も訓練受講もしていない若者も急増しています。その割合は若い女性で31.1%、若い男性で14%にのぼります。
 

9、産業と技術革新の基盤をつくろう

レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
世界の製造業の生産高が激減しています。これは新型コロナウイルス感染症による危機の影響で、2020年に6.8%もの下落を記録しています。また、航空機を利用した移動の需要面で、2020年は壊滅的な1年となりました。航空機利用者数は2019年の45億人から2020年には18億人に減少しています。これは60%の減少です。一方で中度・高度先端技術製品の製造は2020年後半の景気回復を刺激医、2019年同期比で4%の成長を記録しています。
農村地域の道路網に目を向けると、25カ国で暮らす農村地域の住民5億2000万人のうち約3億人が道路に簡単にアクセスできない状況があります。従って農村地域の道路網の改善は貧困削減に繋がると判断できます。
新型コロナウイルス感染症のような危機の解決策を見出すためには、研究開発への投資拡大が不可欠です。全世界の研究開発への投資額は2.2兆ドルで、これは住民100万人あたり1,235人の研究者の割合を意味します。
 

10、人や国の不平等をなくそう

国内および国家間の不平等を是正する
コロナ禍により金融危機以来の所得の不平等縮小における前進が帳消しになる可能性があります。
新型コロナウイルス感染症により、新興市場と開発途上国における平均ジニ係数が6%上昇する見込みです。ジニ係数とは、所得の不平等を0から100で測る指標で、0はすべての人に所得が平等に行き渡る状態を示し、100は所得を1人がすべて独占する状態を示します。
世界人口に占める難民の割合は2010年以来、少なくとも倍増しており、その数は10万人に対し311人が難民である状態になります。
 
11、住み続けられるまちづくりを

都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ接続可能にする
コロナ禍によりスラムで暮らす人々の窮状が深刻化しています。スラムで暮らす10億人超の過半数が3地域に居住しています。
東アジア・東南アジア:3億7000万人
サハラ以南アフリカ:2億3800万人
中央アジア・南アジア:2億2600万人

世界156カ国で都市計画の国家政策を策定しています。しかし計画の実施段階にあるのはわずか半数です。公共交通機関への便利なアクセスが可能なのは、世界の都市住民のわずか半数です。便利なアクセスとは、バス停などの少人数輸送システムから500メートル以内、鉄道やフェリー乗り場から1000メートル以内に暮らしていることを指します。
 
12、つくる責任 つかう責任

持続可能な消費と生産のパターンを確保する
全世界のマテリアル・フットプリント(資源の採掘量)は2000年から2017年までの間に70%増加しています。毎分100万本のペットボトルが購入され、毎年5兆枚の使い捨てプラスチック製レジ袋が捨てられている状況です。
電気・電子機器廃棄物は引き続き大幅に増加していますが、責任ある処理は行われていません。1人当たり7.3キログラムの電気・電子機器廃棄物が発生しているのに対し、リサイクルされたのはわずか1.7キログラムです。
開発途上国には再生可能エネルギーの手つかずの莫大な潜在性が依然としてある状態です。新たな再生可能電力の容量は、先進国で1人当たり880ワットに対し、開発途上国では1人当たり219ワットで、新たな再生可能電力の容量は4倍となります。
 
13、気候変動に具体的な対策を

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策をとる
気候危機は続いていてほとんど収まっていない状況です。2020年の地球の平均気温は、産業革命前の気温を1.2°C上回る状況で、パリ協定が求める1.5°C未満に抑まるめどはまったく立っていません。増加する温室効果ガス(GHG)の排出量問題もあり、経済をカーボン・ニュートラルに移行させる必要があります。カーボン・ニュートラルとは日本語で炭素中立と言います。何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量にする、という目標のことをいいます。

 
14、海の豊かさを守ろう

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
私たちの海洋の持続可能性は深刻な脅威にさらされています。プラスチック/海洋汚染、漁獲高の急減、酸性化、富栄養化、海水温度の上昇などが挙げられ、30億を超える人々が海洋で生計を立てている事実があります。
デッドゾーンも2008年の400カ所から2019年には700カ所へと驚くべき割合で増加しています。「デッドゾーン」とは、十分な酸素がないために海洋生物が生息できない海域を示します。また、半数を超える主要な海洋生物多様性領域が保護されていない実態もあります。しかしながら、国家研究予算のうち、海洋科学分野に充てられている割合は平均でわずか1.2%となっています。

 
15、陸の豊かさを守ろう

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止 および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで評価対象となった生物種の4分の1超が絶滅の危機に瀕しています。
絶滅の危機に瀕した生物種の割合
両生類:41%
針葉樹:34%
造礁 サンゴ類:33%
哺乳類:26%
鳥類:14%
IUCNレッドリストは、134,400種を超える哺乳類、鳥類、両生類、造礁サンゴ、針葉樹に関するデータを追跡。37,400種超が絶滅の危機に瀕しています。
ほぼすべての国が特定外来生物を阻止または規制する法律を採択しています。特定外来生物は固有種の生物多様性に悪影響を及ぼし、世界経済に毎年数十億ドルもの損害を与えています。
持続可能な森林管理に向けた前進が見られてきましたがしかし、世界ではこの20年間で1億ヘクタールの森林が失われた事実があります。
 
16、平和と公正をすべての人に

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
コロナ禍により子どもが搾取されるリスクが高まっています。その中には、人身取引と児童労働が挙げられます。人身取引の被害者の3人に1人が子どもであり、児童労働は1億6,000万人に増加しています。この20年間で初めて増加です。2020年には、32カ国において人権擁護者331人の殺害が報告されました。これは2019年比で18%の増加です。また、わずか82カ国しか国際基準を満たす独立した国内の人権機関を設置していない事も事実としてあります。

賄賂の授受が少なくとも5倍生じやすい現実があります。低所得国37.6%に対し高所得国7.2%。

 
17、パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
2020年の正味ODA総額は過去最大の1,610億ドルでした。これはドナー国の国民総所得 (GNI)の0.32%です。目標はGNIの0.7%であり、依然として目標に
は届いていません。
外国直接投資は1兆5,000億→1兆ドルへ、最大で40%減少しています。
コロナ禍でインターネット接続が圧倒的に必要にもかかわらず、世界人口の半数近くである37億人が依然としてインターネットを利用できていません。
低・下位中所得国の63%がコロナ禍による課題に対処するため、データ・統計整備に向けた追加資金融資を必要としています。